膝に突然痛みが走ったのは、数人の仲間とトレイルランニングを楽しんでいる時でした。
その日は50kmの行程でしたが、筆者はあえなく途中で離脱。
解熱鎮痛剤を飲みテーピングで膝を保護してなんとか下山しましたが、冷や汗たっぷりだったのを覚えています。
山や釣り、キャンプなど野外遊びは魅力にあふれていますが、その反面、危険も潜んでいます。
もしあの時テーピングテープがなかったら…。
解熱鎮痛剤がなかったら……。
こうした”もしも”のけがや事故に備えて携帯するのが「ファーストエイドキット」です。
アウトドアを楽しむ全ての人が用意するべきものでしょう。
ここでは、筆者が実際に危険に遭遇した体験談を交えながら、基本的なキット内容をご紹介します。
野外の危険を認識し、ファーストエイドキットの中身を改めて考えてみてください。
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目次
フィールドに潜む危険
六甲山にハイキングに出かけた時のこと。
大きなエンジン音を響かせながら、上空にヘリが旋回してきました。
見上げると、今まさにレスキュー隊員が降下しようとしており、その先には男性が動けずにぐったりしています。
どうやら、足を捻挫か骨折したようです。
そこは特に危険な場所ではなく、人通りも多い緩やかな登山道だったのに……。
またある時は、山中でイノシシに手をかまれた男性に遭遇したこともあります。
その男性は救急用品を携帯していませんでした。
出血があったものの、幸いにも軽傷であっため応急手当でことなきを得ました。
六甲山といえば関西で人気の低山で、家族連れでも安心してハイキングを楽しめる場所です。
しかし、油断すればけがで動けなくなったり、滑落して命を落としたりと、危険が潜んでいます。
山行や釣りを含め、アウトドアの楽しみには常に危険が伴います。
では、どうすれば危険を回避できるでしょうか?
まずは、どのような危険が潜んでいるかを認識しましょう。
けが
アウトドアで一番多いけがは、小さなすり傷や切り傷ではないでしょうか。
特に、小さな子供は転倒して膝や手を擦りむくことは多いでしょう。
小さな段差につまずいたり、踏み外したりした瞬間に「捻挫」することもよくあります。
重い捻挫は歩くこともままなりません。
擦り傷にせよ、捻挫にせよ、適切な応急手当が必要です。
危険な生物
野外には危険な生物も生息しています。
危険とはいえ、動物の方から突然人を襲うことはありません。
動物に脅威を感じさせる行動を、人が知らずに行っているのです。
回避するには、動物の習性を理解しましょう。
危険な生物と見出しに記載しましたが、人間側が生物達と共生するという理解が足りていない状態が「危険」だと呼べるかもしれません。
熊・イノシシ
熊は九州・沖縄を除く地域に広く生息し(四国は限られた地域)イノシシは九州から北海道まで生息しています。
基本的にはどちらも臆病な性格で、人を避け、積極的に襲うことはありません。
不意の遭遇を回避するために、熊鈴やラジオなどを携帯し対策を講じることが重要。
万が一遭遇した時は慌てないこと。
背中を見せずにゆっくりと後ずさりします。
ちなみに「死んだふりをする」は俗説ですから、決してまねをしてはいけません。
マムシ・ヤマカガシ・ハブ
国内の毒ヘビはこの3種類です。
ハブをのぞいて、基本的には臆病で積極的に人を襲うことはありません。
危険なのは、お互いに気づかずに接近した時です。
かまれた場合はポイズンリムーバーで毒を吸引し、速やかに医療機関での治療を受けましょう。
スズメバチ
もっとも厄介な生物がスズメバチです。
代表は、強い毒性を持つオオスズメバチと、攻撃的なキイロスズメバチ。
ハチ毒で引き起こされるアナフィラキシーショックにより、年間30人程が命を落としています。
対処方法は巣に近づかないことです。
黒いものを狙う習性があるため、黒っぽいウエアも避けましょう。
もし遭遇した場合は、じっと動かずスズメバチの様子を見ながら、ゆっくり後ずさりしましょう。
特に、スズメバチが人間の周りを何周も飛び回る状態は危険です。
このような状況のときは、監視役のスズメバチが最大級の警戒をしている証拠。
じっと動かずスズメバチが人間から離れるのを待ちましょう。
人間から離れたタイミングで慌てずに静かにその場を去ります。
手で追い払う行動はハチを刺激し逆効果です。
万が一刺された場合はポイズンリムーバーで毒を吸引し、医療機関で治療を受けましょう。
ファーストエイドとは
野外でけがを負った場合、適切な応急手当=ファーストエイドが必要です。
ファーストエイドとは、起きた事故やけがに対して、悪化させることなく現状を維持し、医療機関に引き継ぐことをさします。
決して治療や診断ではなく、手順はマニュアル化されており、正しい手順を踏めば誰でもできるものです。
自動車免許をお持ちの人は、自動車教習所で心肺蘇生法の講義を受けませんでしたか?
医師でなくても行えるファーストエイドは、自動車教習所や自治体が行う防災訓練などのカリキュラムにも取り入れられています。
ただし、正しいファーストエイドを覚えても道具がなければ実行できません。
その道具が、次項でご紹介するファーストエイドキットなのです。
ファーストエイドキットの中身について
ファーストエイドキットを用意するにあたり、大事な点は「自分で用意する」ことです。
使えないものが装備にあっても意味がありません。
以下を参考に、予測される危険に対して必要なものを各自で用意しましょう。
使用期限切れがないか、定期的に中身を点検することも大切です。
専用ポーチ
上記は、Deuter(ドイター)ファーストエイドキットバッグM 旧型
ファーストエイドキットは、一目でそれと分かることが大切です。
それは、自分以外の人が使うこともあるからで、緊急時にバッグの中を探し回る余裕はありません。
防水ポーチが望ましいですが、そうでない場合はポリ袋や防水バッグで対策しましょう。
ポリ手袋・ポリ袋
出血による感染症予防のために必要です。
医療用手袋がベストですが、食品用などでも代用できます。
絆創膏・湿潤療法絆創膏
湿潤療法用の防水フィルムを用意しましょう。
以前は「傷口は消毒し、乾かせ」と言われていましたが、現在では傷口を清潔な水で洗い、防水フィルムを貼る湿潤治療が一般的です。
キズパワーパッド普通サイズ
幅広く使用できる普通サイズの「キズパワーパッド」です。
キズパワーパッドは、表面に完全防水素材を採用しているため、水に強いというメリットも。
キズパワーパッド靴擦れ用
源流遡行や登山などでは、靴擦れのリスクが高いです。
そのような場合には、靴擦れ用のキズパワーパッドがおすすめ。
キズパワーパッドひじ・ひざ用
キズパワーパッドは、ひじやひざなどパーツごとに販売されているので、フィット性が向上します。
ケアリーヴ Tサイズ(指先用)
指先用のバンドエイドもあると何かと重宝します。
ちょっとした擦り傷などに対応可能。
ケアリーヴ 防水タイプ Mサイズ
防水仕様の指先タイプも備えておくと重宝するでしょう。
ポイズンリムーバー
ハチやヘビなど毒虫にかまれた時に使用する吸引具です。
かまれた場所にあてがい毒を吸引します。
テーピングテープ
患部の固定や道具の応急補修にも使える必携品です。
非伸縮と伸縮テープの2種類を用意しましょう。
伸縮テープ
非伸縮テープ
三角巾
止血や固定など幅広く使え、これも必需品です。
清潔な布であれば代用が可能。
包帯
骨折や外傷に使います。
複数枚用意しておきましょう。
ハサミ
衣服も切れる医療用ハサミがベストですが、アーミーナイフで代用可能です。
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とげ抜き
少々高価でも、なるべく精度の高いものを選びましょう。
アーミーナイフの付属品でも代用が可能です。
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医薬品
虫刺され用の軟膏、解熱鎮痛剤、胃腸薬などの常備薬や、予備のコンタクトレンズも用意しておきましょう。
ハンドブック
筆者はファーストエイドのマニュアルに以下の2冊を用意しています。
エイ出版社「PEAKS BOOKS アウトドア緊急対応マニュアル」
山と渓谷社「レスキュー・ハンドブック」
どちらも丈夫なカバー付きで、どちらかをバッグに入れて携帯しています。
ただし、事故がおきてからマニュアルを読んだのでは遅いです。
日頃から目を通しておきましょう。
その他の緊急装備
ファーストエイドキットとは別に、緊急用装備も用意しておくと安心です。
水は必ず持参すること
水は飲み水としても持参することをおすすめしますが、それ以外に万が一の傷口を洗浄する別の清潔な水を用意すると良いでしょう。
熊鈴・熊よけスプレー
熊の生息域で、ぜひ携帯したいのが熊鈴と熊よけスプレーです。
熊対策は遭遇を避けることが一番で、熊鈴を鳴らし、人の存在をアピールしましょう。
熊鈴は、できる限り大きな音が鳴り、よく響くタイプを選ぶと良いです。
沢登りや川などでは、水の流れる音によって、熊鈴が響かないことがよくあります。
サバイバルシート
何らかの理由で動けなくなった場合に、体温を守るアルミ蒸着シートです。
動けなくなると急激に体が冷え、夏場でも低体温症になる危険があります。
薄く軽くかさばるものではないので、バッグに忍ばせておきましょう。
ライター・防水マッチ・メタルマッチ
火を起こす道具も欠かせません。
焚き火を起こせれば、体温の維持やぬれた衣服を乾かせます。
ぬれても使えるメタルマッチがおすすめでしょう。
まとめ
アウトドアレジャーは楽しみの反面、危険も伴います。
起こりうる危険を認識し、日頃から備えることが安全にアウトドアを楽しむコツと言えるでしょう。
この記事を参考に、ファーストエイドキットの重要性を考え、キットを用意してみてください。
多くの人に、より安全にアウトドアライフを楽しんもらえれば、うれしく思います。
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