釣って楽しいのはもちろんですが、食味の良さでも有名なアジ。
筆者は今まで調理師として、様々な魚に関わってきたのですが、脂の乗ったアジは個人的に最も美味しいと思っている魚の1つです。
- 綺麗に三枚おろしにできない
- 皮が上手に引けない
- 正しい持ち帰り方がわからない
上記3つの悩みは、筆者が魚をさばき始めた頃に特に悩んでいたことです。
釣り人たるもの、自分で釣った新鮮な魚を食べられるのは最高の特権ですよね。特にアジなどの回遊魚は鮮度の違いが顕著に出ますので、なおさらです。
多少誤った方法で処理しても、もちろん自分で釣ったアジは十分に美味しいです。
しかし、正しい方法を少し覚えるだけでもっと美味しいアジを食べることが可能です。
SPONSORED LINK
目次
捌く前に・・・アジを最高の状態で持ち帰る方法
さばき方ももちろん重要ですが、釣ったアジを家に持って帰ってくるまでの段階をおろそかにしてしまうと、せっかくの新鮮なアジを最高の状態で食べることができません。
必要な作業は、魚を絞めてクーラーボックスに入れて持って帰ってくるだけの簡単なものですが、この段階でどれだけ美味しいアジになるかが決まるとも言えます。
ここでは家にある手軽なアイテムで簡単にできる絞め方から、漁師が高級な大型アジに行う本格的な絞め方、また正しい持ち帰り方を紹介したいと思います。
用意するものは自宅にある物でOK
釣ったアジを最高の状態で持ち帰るのに、特別な装備は必要ありません。
準備する道具は、基本的には家にあるもので十分です。
- ナイフ(魚を締める用)
- 水汲みバケツ
- クーラーボックス
- 氷(保冷剤はNG)
ナイフ
魚を絞める程度のナイフであれば、基本的になんでもOKです。
釣具店で売っているようなサバイバルナイフがあれば最高ですが、例えば台所にある使わなくなったペティナイフだとか、使わなくなったハサミなんかでも対応できます。
切れ味も大して必要ではありません。
ただラインカット用のハサミなどを使ってしまうと、錆などが原因で切れ味が落ちてしまうので、使い分けることをお勧めいたします。
もちろん十徳ナイフなんかでも対応可能です。
筆者はビクトリノックスを使用していたのですが、どうしても洗うのが大変な構造なので、個人的には下記記事のようなサバイバルナイフがオススメです。
▼サバイバルナイフなら洗うのも快適!
水汲みバケツ
水汲みバケツはアジを持って帰る際の必須アイテムになります。
足場が低いところなどでは、普通のバケツでも対応可能ですが、アジが釣れるような波止や漁港はだいたいそこそこ足場が高いので、しっかりと準備しておきましょう。
水汲みバケツにしては少しお高いですが、ネット付きの水汲みバケツは、水を変える際や水を抜く際に魚を入れたまま行えるので、かなり手間が省けます。
それと安物は紐が切れることがあるので、あまりおすすめできません。
▼水汲みバケツを選ぶ際は耐久性も重要です!
クーラーボックス
持って帰るアジのサイズや数にもよりますが、波止や漁港で釣る程度であれば、小型のもので事足りると思います。
特に移動の多いアジングスタイルなどでしたら、クーラーボックスは小さいに越したことありません。
なお、クーラーボックスは価格の違いが顕著に出ます。
筆者はホームセンターで1,000円くらいで買った安物を使っているのですが、釣友が使っている下記のクーラーボックスに比べると、氷が溶けるスピードがとても早いです。
家から釣り場への移動の時間が長い方は、クーラーボックスにはそこそこお金をかけたほうがいいかもしれません。
そんなにすぐ壊れるものでもありませんし、むしろそこそこ値段がするものは壊れ難い印象です。
ちなみに筆者の安物クーラーはここ10年ほどだけでももう4代目なんですが、1回目は穴が空き、2回目はフタが壊れ、3回目は取っ手が壊れました。
安物を4つも買うぐらいだったらどう考えてもしっかりしたものを1つ購入しておけばよかったと後悔しています。
▼自宅まで移動距離がある場合には高品質なクーラーボックスを
氷
最後に氷ですが、釣具店でエサを買う際か、コンビニで飲み物などを買う際に一緒に購入しましょう。
よくケーキなどを購入した時に付いてくる保冷剤を使う方もいらっしゃいますが、アジはヒレなどが鋭い魚なので、破れて保冷剤の内部が水に混じってしまう可能性があるため、あまりオススメできません。
アジが釣れる前に・・・準備しておくこと
釣り場について、タックルやエサを準備して、早速釣り!
といきたいところですが、アジを持って帰るつもりであれば、氷の入ったクーラーボックスに海水を入れて氷水を作り、水汲みバケツに半分ほどの水を張って準備をしておきましょう!
アジは釣れだすとバタバタと一気に釣れることが多いので、できる準備はして、来たる時合いにできるだけ効率よく釣れるようにしておきましょう。
真水で氷水を作るのはNGです。特にアジは絶対にダメ。
海水よりも浸透圧の高い真水の中に魚を入れてしまうと、身が水を吸って水っぽくなってしまいます。
特にアジは皮が薄く、身が水を吸ってしまいやすい魚なので、出来るだけ釣れた場所の海水の塩分濃度を薄めないように注意しましょう。
釣れたアジの正しい締め方ご紹介!
締め方①血抜きからスタート!正しい血抜きで味が決まります
小型のアジをフライや南蛮漬けで食べるのなら血抜きは飛ばしても問題ありませんが、中型や大型のアジ、特に刺身や寿司などの生食をする場合はやはり血抜きが必要です。
エラをナイフで切って、少し水汲みバケツの中に入れておけば勝手に血が抜けていきます。
この際に、必ずアジが生きた状態で血抜きをするようにしましょう。死んでからでは十分に血を抜くことができません。
締め方②神経抜きでアジの鮮度を保とう
大型個体や、よく太った状態のいいアジが釣れた際は、ぜひ神経抜きも実践してみてください。
専用のワイヤーが必要になるのですが、血抜き後のアジの尻尾を切って骨の少し上にある穴にワイヤーを通すだけの簡単な作業です。
これで身質、とくに2日3日と熟成させた場合の状態が大きく変わります。
高級なブランドアジなどを釣る漁師達も実践しているプロの方法です。
なお、神経抜きは必須ではありません。大きなアジやよく太ったアジを刺身にする際などは実践すると良いでしょう。
▼神経抜きにはこちらがおすすめ!神経抜きの解説付き
締め方③最後に氷水(海水)に入れて鮮度を保ちましょう
エラを切ったアジはバケツの中であっさり死んでしまうので、そのままにしないで、血が抜け切った頃合いを見計らってクーラーボックスに移動しましょう。
よく釣れている時間帯に移動させるのは面倒臭いので、少しバケツにアジが溜まったタイミングにまとめてクーラーに移動させましょう。
この時に血だらけになったバケツの水も一緒に変えてしまいましょう。
締め方④面倒臭い場合にはエラにナイフを入れて氷水に放り込むだけでもOK
時間が無い場合や水汲みバケツを経由させるのが面倒臭い場合は、釣れたアジのエラだけ切って、そのまま氷水に入れてしまってもOKです。
硬直して動きが止まってしまうために、血がしっかりと抜けませんが、中小型のアジや、生食をしない場合はそれでも十分です。
- ①釣れたアジのエラを切り落とす
- ②海水の入った水汲みバケツで血抜きを行う(アジが生きた状態で血抜きすること)
- ③血抜後のアジの尻尾を切って骨の少し上にある穴にワイヤーを通し神経抜きをする(必須ではない)
- ④血抜き完了後、氷と海水でつくった氷水の入ったクーラーボックスに移動する
- ⑤クーラーボックスに移動したタイミングで水汲みバケツの水を変えておくと効率が良い
- ポイント!水汲みバケツにある程度アジがたまったらクーラーボックスへ移動するとラクチン
釣り場を去る前に・・・
釣りが終わって帰路に着く前に、ゴミをまとめるのはもちろんですが、意外とウロコや血が飛び散っているので、しっかりと水汲みバケツを使って海に流してから帰るようにしましょう。
それと氷水にアジがたくさん入ったクーラーボックスですが、車の揺れで水がこぼれてしまう可能性があるため、出来るだけ水を減らしておきましょう。
車を汚さないための対策ですが、筆者のオススメは洗濯カゴの中にクーラーや濡れものをまとめて入れて持って帰ることです。
▼筆者は、洗濯カゴを利用してクーラーボックスや濡れ物を管理しています
これなら最悪運転中にクーラーがひっくりこけてしまっても大丈夫ですよね。
ちなみに筆者は一度車の中でクーラーをひっくり返した経験があります。
あんな思いは読者の皆様にはしていただきたく無いので、洗濯カゴの使用を強くオススメします。
スペースがない場合などは、ゴミ袋に入れるのもありかなと思います。
「アジの下処理方法」の解説!とても簡単なのですぐ終わります。
「え、そんなことしたらせっかく鮮度のいいアジがダメになっちゃうじゃないか!」
と言われてしまいそうですが、正しい方法で持って帰ってきていれば、1日ぐらいは全然平気です。
下処理を次の日に回す場合は、しっかりと水気だけとってバットか何か平らなものに入れて、臭いが漏れないようにバットごとビニールに入れて冷蔵庫に放り込んでおきましょう。
とはいえ下処理作業自体、割とすぐに終わるので、時間があればお風呂に入る前にささっと終わらせてしまいましょう。
ゼイゴ取りは身をえぐってしまわないように注意しましょう
まな板と包丁を用意して、まずは「ゼイゴ」と呼ばれる硬いウロコの一種を包丁でとっていきます。
このギザギザした部分がゼイゴです。
次に、尻尾の付け根から包丁を入れ、包丁の刃先の角度を平行よりも気持ち上向きにして進めていくのがコツです。
身をえぐってしまわないように注意しましょう!
次はウロコ取り!専用ウロコ取りは必要ありません。
次にウロコをとっていきます。
アジのウロコは簡単に取れるので、専用のウロコ取りは必要ありません。
むしろウロコ取りを使うと細かい部分が作業し難いので、基本的には包丁の刃先を使って優しくウロコをとっていきます。
強く擦ると身が痛んでしまうので、サッサッとほうきで掃くようなイメージで作業してください。
内臓取り!綺麗に掃除しましょう
ゼイゴとウロコをとったら次は内臓取りです。
まずは頭をこれくらいの角度で切り落とします。
次に腹をカットし、腹の中を綺麗に掃除していきます。
先ほども説明した通り、真水にはあまり当てないほうがいいので、この時にウロコも内臓も一気に流してしまいましょう。
綺麗に流し終えたら、水気をとって下処理完了です。
南蛮漬けやフライなど、このまま使う料理の場合は、全ての作業が完了したともいえますね。
【調理師アングラー直伝】アジの捌き方講座(三枚おろし・腹骨すき・骨抜き・皮引きのやり方)
さて本題のアジの捌き方に入っていきましょう!
ここからはアジの捌きに入っていくわけですが、そのまま作業せずに、少し冷蔵庫に入れて寝かせるのがおすすめです。
少し寝かせることで、身がしまって捌きやすくなります。
三枚おろしのコツ!包丁は腹から入れると綺麗に捌けます
まずは乾いたまな板と包丁、きつく絞ったタオルを用意します。
中骨から身を剥がしていく作業ですが、腹側から作業するのがオススメです。
魚を腹から捌くのは切腹を意味するとして縁起の悪いものとされていましたが、腹から捌いた方が簡単です。
ゼイゴ取りの時とは反対で、刃先をやや下向きに、骨に軽く当てながら進めていくと綺麗にさばけます。
真ん中まで行ったら次に反対の背中側からも包丁を入れていきます。
背中側からも骨に到達したら、中骨と身が繋がっている部分を切り離していきます。
この時に身をえぐってしまいがちなので気をつけましょう。
このように片面が終わったら、もう一面についている中骨をおろしていきます。
頭側から包丁を進めていきます。
この時は包丁の刃をやや上向きにして進めていくと、下の身を削がずに済みます。
骨を剥がしおわったら、三枚おろしが完成です。
腹骨すきのコツ!指を切らないように注意
三枚におろし終わったら、次は腹骨、人間でいう肋骨の部分をとっていきます。
包丁を深く入れすぎず、刃先の上にある骨に沿わせるのがコツです。
魚が小さいと特に難しいので、最初はうまくできなくても大丈夫です。
指を切ってしまわないようにだけ注意しましょう。
骨抜きのコツ!骨抜き専用ピンセットが便利
骨抜き作業は、骨抜き用ピンセットを使って真ん中にある小骨を抜いていきます。
家庭用の毛抜きでも対応可能ですが、やはり専用の骨抜き用ピンセットを使ったほうが簡単です。
指で身を触りながら、取りこぼしがないか確認しながら進めましょう。
▼魚をより美味しく頂きたいなら骨抜き用ピンセット!
皮引きのコツ!誰でも簡単にアジの皮を引ける裏技公開
アジの皮引きは薄くて簡単に剥がれますが、慣れていないと意外と失敗してしまいます。
身をえぐってしまうことは少ないですが、引いている途中で皮を千切れてしまうような経験をされた方も多いのではないでしょうか?
ここでは基本的な皮の引き方、またアジの皮を簡単に引くための裏技も紹介したいと思います。
どの魚にも通ずる基本的な皮の引き方
まずは基本的な皮の引き方ですが、尻尾側から皮をまな板と包丁の間にかませ、皮を引っ張って引いていきます。
この際のコツは包丁を動かさないことと、皮をしっかりと抑えることです。
指だと滑ってしまう場合は、タオルやキッチンペーパーを使って抑えるのがおすすめです。
なお皮引きもアジが小さいと綺麗にできないことが多いので、失敗しても気にしなくてOKです。
これはどの魚にも通ずる基本的な皮の引き方なので、小さなアジがたくさん釣れたときなどに、練習を重ねておくのがおすすめです。
誰でも簡単に皮を引ける裏技公開!
次に、最も簡単なアジの皮の引き方をご紹介したいと思います。
他の魚にはあまり使わないのですが、本当に簡単なので、ぜひ実践してみてください。
この皮の引き方をする場合、三枚おろしをする前に作業する必要があります。
まずは三枚おろしをする時と同じ位置に切れ目を入れます。
この時に深く身を切らないように気をつけてください。
皮だけを切る程度が理想です。
切れ目を入れた皮をこのように骨抜き用のピンセットでしっかりと掴みます。
ゆっくりと皮をむいていきます。
いかがですか。とても簡単な裏技です!
これなら初心者でもミスをすることがありません!
ちなみにこの方法で皮を引く場合は、釣ってすぐのアジだと身と皮が一緒になって剥がれてしまいそうになるので注意が必要です。
この場合は、皮を引いた後に三枚おろしです。
まな板をきれいにして作業しましょう。
あとは切り分けるだけ!
ここまでくればあとはお好みの大きさに切り分けるだけです。
小アジだと二等分ぐらいでいいと思います。
ここまでお疲れ様でした!
三枚おろしをする場合の注意点
三枚おろしにする前に、一度に複数のアジをおろした際などは、どうしても身に細かなウロコがついている場合があります。
その場合はボウルに氷水を作って、その中でサッと洗い流しましょう。
洗い流したあとはすぐにキッチンペーパーで水気を拭き取りましょう。
まとめ
ここまでアジの処理法やさばき方を紹介してきましたが、最初は上手くいかなくて当然です。
筆者はもう10年以上魚をさばいており、なんだったら本業として毎日さばいていた頃もあるぐらいですが、今回家で作業をしながら撮影をした際は、包丁が切れないだとかまな板が小さいだとかシンクが低いだとか、もののせいにしながら何度も失敗をしました。
しかし、アジのさばき方をマスターしてしまえば、他の魚もほとんどさばけると言っても過言ではありません。
それぐらい魚をさばく際の基本中の基本になるのがアジです。
たくさん釣れると少しめんどうくさいですが、練習だと思ってしっかり取り組めば、必ずその経験が他の魚にも生かされるはずです。
ぜひこれを機会に釣ったアジを美味しく料理してみましょう!
▼魚の捌き方入門!黒鯛の捌き方をマスターすれば他の魚にも応用可